1. クレーン・鶴

    藍ふかき都市の夕空クレーンはいつか死にたる恐竜となる 井辻朱美(短)
    冬空の紺ふかく反るクレーンのとおきアステカの殉死の記憶 井辻朱美(短)
    紅白のクレーンしずかに天を拭う「モロボシダンの名を借りて」ゆけ 井辻朱美(短)
    思いっきりクレーンが手を延べるとき都会の夜に神さまはいない 杉崎恒夫(短)
    赤クレーン ウルトラマンの故郷【フルサト】を指【さ】したらスイッチ切られちゃったよ 千葉聡(短)
    クレーンがつまらん思慕をつる下げたまんま作業を止めてしまった 増尾ラブリー(短)
    切り取られがちな世代だ夏空の斜辺となりて光るクレーン 中沢直人(短)
    「環境を大切に」という看板の二字を隠して伸びるクレーン 本多忠義(短)
    首吊りの縄たるるごとクレーンは秋霖を浴び影をたれたり 江田浩司(短)
    降りさうで何も降りこぬ午後の空クレーンの黄色い腕折れたまま 福士りか(短)
    丘の上の黄のクレーン車は放置され 五年は経つてしまつたかしら 王紅花(短)
    クレーンの操縦席でいっせいに息を引き取る線香花火 笹井宏之(短)
    夜のクレーン一台ぽつと桜降る 御中虫(俳)
    クレーン旋廻首の二十や三十は 石田柊馬(川)